二重人格神様



「傷は平気?このくらいなら、痛くはないかな」



「…大丈夫です」


「そう、か」



痛くないよ。全然



痛みより、胸のトキメキが収まらない


彼に抱かれて、温もりや、甘い匂い、柔らかいけど硬い感触



全てが、私を狂わす



神様の花嫁なんて、嫌だった。命を狙われて嫌なことばかりだったから



けれど、それがあったから今、こうしてる



人生って、分からない。ほんのささいなことで変わってしまう


私もあの日、風のいたずらで帽子が飛ばなかったから海鈴さんとは出会わなかった



今は、出会えて本当に良かったよ



初めてだもん、お父さん以外に…こんなにも傍にいてほしいと思うのは





「海鈴さん…」


「ん?」


「ありがとう…色々と」


「気にしなくていい、特別だから」

「…ん」





そんな熱に包まれながら、私は静かに瞳を閉じた




























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