二重人格神様



「はぁっ、手は出さないとは言ったけど、途中で止めるのも辛い」


「…っ」



「でも、我慢。我慢だ」


さらにきつく抱かれ、傷に痛みが走るけど、それ以上にこの腕が気持ち良くて痛みなんかどうでもいい




「海鈴さん、我慢、出来るんですか?」


「なにそれ、挑発してる?」


「し、してませんよ?そうじゃなくて…据え膳喰わぬがとか、言うじゃないですか」


「自分で言わない」


「…ひゃ」


ビチッと額を軽く叩かれ、クスクスと笑う彼


そんなに、笑わなくても…まぁ、確かに自分では言わないか


深く考えずに言った言葉に後悔しながらも、彼に抱かれていると不意に彼が口を開く



「ねぇ、いのり?」

「は、はい?」


「ずっと、僕のこと好きでいるんだよ」


「…?」


なにを、いきなり…


「意味がわかりません…好きだすけど、私はそのうち…人間界に帰るんですから…」



海鈴さんは好きだけど、ここにずっと、いるかは話が違う。私はお父さんと平和に暮らしたい



そのために、ここにいるんだもん…そのために、いるんだもん…そのため、だ…よ


.


< 368 / 460 >

この作品をシェア

pagetop