二重人格神様




そう、思うのに胸に何か引っ掛かる



それは、離れたくないってことなんだろう。でも、それだけは口に出来ない


好きだけど、それを口にしたらもっと好きになる。この温もりから離れられなくなる



彼の腕にふれ、それを実感していると海鈴さんは小さく頷き空を見上げる



「そうか。そうだね。でも、駄目。好きでいて」


「それ…強引です。ずっと、片思いじゃないですか」




「片思いなのかい?僕は好きだよ。いのりのこと」


「そう言う冗談、やめてくださいっ」


気持ちこもってないし、本気じゃないって直感的に感じる


「冗談じゃない、本気」



「もう、いいですっ」


「えー…冗談じゃないのに」


「やめて、ください」

「本気だってば」



「もう、怒りますよ!」


「すでに、怒ってるじゃないか」


「からかうからです!もう!」


「ははっ」



もう、もう!いやだ!


昨日は言わなかったのに、わざとらしく好きだなんて冗談を言うんだから


やめてよ、本気にしてまた、好きになる


「……海鈴さんの…ばかっ」


「はいはい」




そう言ったきり、私たはちは話すのをやめた



言葉はもう、いらなかったから。こんな風にじゃれあって、ドキドキして惑わされて


苦しくて、温かくて、好きになる


私だけなんだろうけど、こんな何気ない時間が幸せって思う




そんな、甘い一時だった。






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