不思議電波塔



 眠りはすぐにやって来そうで、なかなか来なかった。

 ぼーっとしたまま、とりとめのないことを考えていた。

 由貴は考え深くはある方だが、考えれば考えるだけ病的な回路に陥りそうなだけの事柄に深くは立ち入らない。

 気分のよいものではないし、同じ時間を使うなら他のことに時間を使った方がいいと考えてしまうからだ。

(あちらの世界に帰る方法──)

 それも心を問われている内容なのではないか。

 ユニスが四季、イレーネが忍だとすれば、この世界で自分だと思えるような人物は誰なのだろうという気がした。

(涼ならフィノだと思うんだけど──)

 リオピア国と親交の深いアレクメス国の姫君。

 だが、フィノのそばには男はいない。

 フィノに仕える騎士としてイレーネという存在は書いたのだが、イレーネはユニスのことを好きになってしまったから、アレクメスにとどまってフィノに仕えるということは出来ないだろう。

(フィノにはどういう人がいいんだろう…)

 由貴は自分と同じような人物をフィノのそばに書く気はまったくなかった。

 フィノのそばにこういう自分のない男はいてほしくない。

 ただでさえ重圧の中にある立場のフィノを疲れさせてしまうだけだろう。

(俺、物語の中でも自分が散漫になっているんだな)

 かろうじてリュールに「我が道を行く」意志を持たせていることくらいが、由貴の「本当はそうしたかったこと」を表しているくらいで、実際の綾川由貴はそうではないからだ。



< 109 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop