不思議電波塔
「──会長」
小さく声。
四季に眠ってからがいいよと言われたため、涼は1時間はおいてから由貴のところに来た。
由貴は目を閉じたまま眠っているふりをした。
眠っていなければ涼を心配させてしまう気がしたので。
涼は由貴が眠っていると思ったのか、歩み寄って来ると、ベッドのそばの椅子にかけた。
涼の指先が由貴の髪にふれてきた。
小さい涼が、普段由貴の髪を撫でてくれるということはあまりない。
前はいつだっただろうか。文化祭の準備に追われて生徒会室の机の上に顔を伏せて眠っていたら、涼が髪を撫でてくれたことがあった。
ふれてくる指先が優しい。由貴はほっとするのと同時に、悲しくなるのを感じた。
フィノのそばに誰も描けないなんて──。
涙がこぼれていた。
涼が手をとめる。
「会長…」
由貴は、目を開けると涙を拭った。
「ごめん。起きてた」
「どこか痛いの?」
「ううん。考え事していただけ」
「涼、いてもいい?」
「…うん」
今度は拒絶されなかった。
由貴が泣いているのを目にしたことは過去に何度かあるが、こんなふうに痛々しい泣き方をする由貴を見るのは初めてだった。
たぶん涙の種類が「自分のことで泣く涙」だからだろう。
「会長…。さっきの尾形くんの声、気にしちゃダメだよ」
「……」
「会長はここにいるもの」