不思議電波塔



「──考えるね、君も」

 不思議電波塔のとある部屋で物語を綴ってゆく由貴を見て、フェロウは感心したような呆れたような表情で見た。

 その後午前1時まで四季と話をしていた由貴だが、眠れなかったため「時空管理人が訪れる」ようにノートに書き呼び出したのだ。

 訪れたのはフェロウだった。

 何か頼みごとでもあるのかと尋ねると、由貴は言った。

「物語の崩壊を止めたい。でも書くには時間が足りない。時間を止めることに問題があるのなら、俺だけを別次元へ一時的に飛ばして崩壊を止めるまでの物語を書いて、書き終えたら飛ばした時の時間へ戻して欲しい」

 フェロウは由貴の話に「出来ないことではない」と答えた。

「つまり、書き終えるのに1週間かかるのなら、君だけが1週間分歳をとってその時間に戻るということだろう。一晩で1週間分歳をとることになるということになるんだが。それでもいいなら俺は構わない」

 由貴はほっとしたように「お願いしたい」と言った。

 それで「こちら」でもなく「あちら」でもない、不思議電波塔に次元移動をしてきて書いているのだ。

 集中して書いている時の由貴は寝食忘れているという感じで、フェロウは少し心配になった。

「なあ、少年」

「綾川由貴です」

「由貴。お前さんのこと、友達も心配してたろう。あの小さい女の子…彼女だっけ?が代わりに書こうとしてくれてたみたいだし、お前さん、もう少し自分を大事にしなよ」

「…うん」

 由貴は手を休めて、空を見た。

「芸術家はわがままだとよく言うよね。俺、何となくその言葉の意味、今ならわかる気がする。自分の極めたいものを目指そうとしたら、人はそうなってしまうんだと思う」



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