不思議電波塔
「──そりゃ、そいつの感覚、そいつの求めたいものを極めようとしたら、そうなるな。他人にはわからんし」
「涼の言っていること、わかるんだよ。出来るなら代わってあげたいっていう気持ち。助けられることならそうしてあげたいっていう。でも、これは多分俺の仕事だから、俺が主導でなければ動かないんだ。メインが落ちてたら、他がどう頑張ってもフォローのしようがないみたいに」
「──」
「わがままでいいんだと思う。わがままではない芸術家がいたら、もしかしたらその作品は誰の目にも止まらなかったかもしれないし」
「その言葉、君の従兄が聴いたら喜ぶね」
「え?」
「『由貴はもっとわがままでもいいのに、変なところで我慢強くて、好きなことが出来ないわがままになってる』って言っていたよ」
由貴はそれを聞いて可笑しくなって笑い出した。
そうかもしれない。四季はよく見ている。
「『好きなことが出来ないわがまま』ね…」
「そんな感じするね。君、好きなものって何?」
「ん…。書くことかな。心の整理が出来るし」
「整理ってねぇ…。君はひどい潔癖症か?湧き上がるように『これが好きだ』っていうものはないのか?」
「うん…。潔癖症は本質的にあるかもしれない。でも湧き上がるものだけが本質だとか原動力でもない気がする。コツコツ積み重ねていくのが好き。『必死じゃなければ本物じゃない』って言う人よくいるんだけど、俺は『必死』になることがあったとしても、それを人に見せるのは嫌い。だから必死じゃないと思われて、いろいろ言われたりもするんだけど。でも他人の思う野次馬のような関心に全部取り合っていたらしたいことも出来なくなるから、取り合わないだけで」