不思議電波塔
フェロウと話している間にも、重い雲で覆われていた空がすっと晴れてゆくような感覚に、由貴はなっていた。
たとえば光が射し込んだ時、それを見て、何を思うでもなく自然に前向きな気持ちになれるのは何故だろう。
ふだんつきつめて考えないことや何気ないことに興味や幸せや未来が隠されていることは多く、それらを喜ぶ感情があることを由貴は幸せなことだと思う。
人間が出来ることは破壊することだけだと語る人間もいるけど、綺麗な音楽や絵や建物や、そういったものが歴史の中にあることは破壊だっただろうか?
違う気がする。
ひとつの側面を見てすべてを否定することは、すべてを肯定することと同じくらいの「思い込み」でしかない。
でも人間の目はそういうふうに作られているのだから、それはその必要性があったということだろう。
焦点がぼやけないような目はひとつのものをよく見ることや考えることに繋がる。
ひとつのものに偏りを生じる人間の性質を、ダメなものと見なすか、いいものと見なすかは人の器にもよりけりで、由貴はそれを扱う人の裁量次第だと考える。
「人は人の生き方を見てしまうから、幻滅してしまうものなのかもしれないね」
「え?」
「勝手に『こういう理想であって欲しい』という思い込みで他人を見るから、実際は思い込みの人とは違うとわかって幻滅するんだと思う。それは幻滅する方がある意味ダメなだけだと思うんだけど。それでも完璧な人って言われる人たちが時々いて、その人たちはあるひとつの視点において完璧なんだと思う。違う視点から見たら『その人には出来ないこと』はあるんだよね。その人の生き方を見るんじゃなくて、その人の大事にしているものを見たら、その人がどういう人なのかはわかるのに」