不思議電波塔
「君はどちらかと言うと『完璧な人』と言われる類いの人間だと思うけど」
「俺がそう言われているとしたらそういうふうに見えるだけだよ。実際の綾川由貴はたんに『周りの人間を心配させたくないがためにとか、人は孤独なものだという不安を埋めるために優等生をしていて、たまたまそれが傍目には出来ていたように見えただけの人間』なのかもしれないし」
「自分のことを他人のようにバッサリ評価出来るのも君だよね」
「そうだね。だから『潔癖症』なんだよね。自分の中にごまかしの欠片があるのが許せない」
「大概生きにくいタイプだと俺は見るけど?」
「仕方ないよ。何でもかんでもごちゃ混ぜは気持ち悪い」
何の枠もないところというのは自由なようでいて、由貴みたいな人間には不自由なことも多いような気がする。
至極まともな発言をすると、面白みのない人間だとか、窮屈な人間だとか、邪険にされることもある。
同じ年頃の人間にはそう見られて批判された上、先人であるはずの大人たちが実は中身がなかったりすることが往々にしてあるとわかったりすると、空虚な気分になってしまうのだ。
指導する人間や優等生と必要とする人間は確かにいるのに、実際は弱肉強食の論理で回っているだけの世界がある矛盾。
それでいて、誰も人の上に立つ面倒事には関わろうとしない。
面倒なことを引き受ける気がないのなら、誰ひとりとして人を批判する資格なんてあるはずないのに。
「生きていてバカバカしいと思ったりするんじゃない?君、まじめだから」
「ん…。どうだろう。本気でバカバカしいとまでは思ったことない」
「へえ?」
「俺の周りにはたまたま『くだらなくない人間』が多かったのかもしれない。四季とか涼とか見ていたら、俺は自分だけが苦労しているとは思わない。ハッピーエンドを期待して悲劇の主人公になりたがる人間の気持ちって、俺、わからないし。本物の悲劇なら『幸福の王子』とか『よだかの星』みたいな、見返りを求めない精神が根底にあるものだと思うし。くだらなくない人間は他人の評価に関係なく何らかの努力をしていたり魂の綺麗さを持ち続けていたり他者を大切にしたりするものだよ」