不思議電波塔
ふと、涼は目を覚ました。午前2時を回っていた。
由貴がそばにいない。ノートとシャーペンも見当たらなかった。
「会長…?」
部屋にある唯一の照明の小さなランプはついたままだ。涼は不安になって起き上がる。
由貴の筋書きではなく、それは涼のとった行動だった。
由貴は何処に行ったのだろう。
つらそうだった由貴の姿を思い出す。無理をしないでと止めても、由貴は出来る限りの努力を尽くしてしまう人間だ。
部屋を出て歩き始めた。
広い。王宮の中を歩いているだけで迷子になってしまいそうだ。
戻って、四季か忍を起こした方がいいのだろうかと思い始めたところで、声がした。
「涼?」
ユニスが歩いてくるところだった。
「ユニス」
「眠れませんか?」
ユニスは涼のそばに立った。涼は152センチある。でもユニスは涼よりもう少し高い気がした。
ユニスも150センチくらいだったと思うが…。
「ユニス、背伸びた…?」
のんびりそんなことを聞いてしまった。ユニスは「はい」と肯定する。
「イレーネと会ってからです。気のめぐりが良くなっているとも言われたので、たぶん成長しやすい時になっているんだと思います」
「イレーネがいるから?」
ユニスははにかんだように頷いた。
「たぶんそうです」
涼はユニスとこういう話が出来るのが嬉しかった。
殺伐とした話は心が苛まれる。
由貴の書く物語に生々しい殺戮シーンや暴力シーンが出て来ないのは、たぶん由貴がそういったものに傷つく心があるからだと涼は理解していた。