不思議電波塔



 涼は単刀直入に、いちばん聞きたかったことから聞いた。

「ユニスとイレーネは『ジャスティ』という子のこと知ってる?」

 イレーネは首を振った。

「私は知らない。ユニスは?」

「…聞いたことはあります」

 ユニスは何処でだったか、遠い記憶をたぐり寄せるような面持ちでいたが、やがて答えた。

「──そうです。セラミス先生がその名を言っていたことが…」

「セラミス先生?」

 ユニスは「少し話が長くなっても構いませんか」と前置きをした。涼が頷くとユニスは話しはじめた。

「私が4歳の誕生日を迎える前後、カウフェリン・フェネスは崩壊の危機にさらされていました。今もそうなのですが、その頃から世界は少しずつ綻び始めていたのです。最初はハロン国の人喰いの幻獣が覚醒するという形で起き、次に私の生まれた国であるリオピアの王都が陥落するという形で起きたのです。私はアレクメスへと逃げ延びました。その逃げ延びた先の町で出会ったのが、セラミス先生です」

「セラミス先生はどんな人なの?」

「その頃72歳でした。未来視の力を持つ杖を携えていました。服を作る職人で、ネムフェリウに住んでいると仰られていましたね。イレーネもセラミス先生には会っているはずです」

 イレーネが思い出すように言った。

「杖のおじいちゃん?」

「ふふ。はい。杖のおじいちゃんです」

「…待って。イレーネがその時ユニスと一緒にいるのはどうして?」

「イレーネは、ハロン国アミステイル王家の王女なんです。幻獣が覚醒しはじめたばかりの頃に生まれた王子は、何者かに拐われたまま消息がわからなくなってしまうということがあったため、王子の妹として生まれたイレーネは王家に生まれながら、ハロンの辺境の地で身を隠していたのです。リオピアの王都が陥落したとの話を耳にして、幻獣の覚醒がいよいよ目に見えて起こるのではないかということを危惧して、海を越えてアレクメスへと逃げ延びてきたのです」



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