不思議電波塔



「あー…。で、俺に由貴の小説の代筆を頼みたいと。代筆って解釈でいいんだよな?絵と文章で描きゃいいんだろ?」

 原稿があがって憑き物が落ちたかのような苳夜はさばけた調子で言った。

 シェネアムーンの姿を見てもさして動揺せず、隆史と早瀬のぶっとんだ話にも動じなかった明日見苳夜は、やはり思考回路が「創作者」であるからのようだった。

 隆史がうるうるした目になり、苳夜の手をがっしり握る。

「明日見くん、ありがとうー」

「ちょ…っ。先生、俺まだ何もしてねーし。やめて。それに俺、由貴と四季に原稿手伝ってもらったからさー。これでチャラになるんなら、俺も手助け出来たみたいで嬉しいしね」

「でもありがたいよ。恩に着るわ。あたしも隆史も絵も文章も書けるというほどは書けないからさ」

 早瀬が言うと、苳夜は照れたように笑った。

「あー…。でもさ、絵も文章もってなると、プロでも大変ですよ。要は由貴に近い文章で四季に近い絵で描き起こすってことでしょ?他に絵が上手い人っていないですか?文章ならまだしも、絵は時間がかかるし…。ひとりくらいいると助かります」

 苳夜の手には四季の描いた絵があった。由貴の部屋にあったノートと絵を隆史が持って来て、苳夜に見せたのだ。

「絵が上手いね…。あ」

 早瀬が口を押さえた。

「いるわ。祈。四季の絵、たぶん描けるわよ、祈なら」

「ああ、祈くんなら確かに」

 隆史がうんうんと賛同した。

「祈?というと…」

「うちの夫。四季の父親だね」

「へぇ…」

 苳夜は何だか面白くなってきたように、紙を探しはじめた。

 芸術家にとっては願ってもない幸運だ。こんなわくわくするようなものが描けるなんて。

「よし。今夜は描く。四季のお父さん、呼んでいいっすよ。こーゆーの、俺、大好きなんで」



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