不思議電波塔
斯くして。
「何ー?四季の絵を描けばいいの?」
午後11時前には綾川祈が明日見苳夜のアパートを訪れていた。
桜沢涼の家に行っていたユリと吉野智も苳夜の家を訪れていて、苳夜は「うちが広めのアパートでよかったわ」と思わずこぼした。
「吉野さん、本当に大丈夫?」
心配する隆史に、智はひらひらと手を振った。
「ああ、大丈夫。私、親に信用あるから。先生も一緒だし。苳夜、よろしくー。ほれ、マンガ家。私の携帯見てみ。すげー絵心刺激されるから」
携帯をぽいっと渡されて、おっとっと、と苳夜は受け止める。
「これが例の…。うわーすげー。これマジで?ちょっと面白いわ、って不謹慎?」
画面の向こうには四季たちが映っていた。
「なになにー?僕も見るー」
苳夜の肩ごしに、祈がひょこっと携帯を覗き込む。
小柄で童顔で無邪気な父親らしい、と話には聞いていたが本気でそのままだ。
それもすごい。
「はいはーい。…何か可愛いんですけど。四季パパりん」
「えー?36歳だよー」
「いや、そーでなくて」
「わー。ほんとだ。四季たちファンタジーな服着てるねー」
「話、きーてますか?」
「聞いてるよー。そーでなくて。だった?えーと、そーでないつづきは?」
「…………………」
綾川祈の人間性がファンタジーだ。と思ったのは苳夜の気のせいだろうか?
「いいキャラクターしてますねー。早瀬さんの旦那さん」
苳夜が褒めると「でしょ?」と早瀬が軽く笑った。
智が横で笑いをこらえている。
「すげー。天然。四季もたまに天然入ってるけど、これちょっと貴重だわ」
祈は周りの声は気にもとめず、好きな絵が描けることに関心が行ってしまっている。画材を選び始めた。
綾川祈は絵を描くことが好きなのだ。
四季たちの状況を説明すると「ふーん」といまいちわかったようなわからないような反応を返し、絵に描くと四季たちがこちらの世界に戻って来られるのだと話すと、ぱっと素直に理解したようだった。
「絵に描けば、元に戻ってまるくおさまるんだよね。じゃ、描くー」
笑顔でふんわりそう答え、隆史は「祈くんは無敵かもしれない」と呟いた。
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