不思議電波塔
「他を潰す発想しかないんだよね?私は他を潰すことに共感する気持ちはないけど」
忍も言った。
創る気持ちがない者は、他を潰す発想に回る。
そうしてしか生きられない者がいるのだろう。
尾形晴が言った。
「残念だけどねぇ、本物のクリエイターさんの発想とそうでない人の発想って隔たりがあるものでね、そういう才能を持ってない奴は『何で才能を持ってる奴だけが得するわけ?』としか思ってないの。生まれた時に金持ちと貧乏人の隔たりがあるのと一緒でね。世の中って不公平だよねぇ。こんな世の中、神様でも裁けないんじゃない?」
ノールが言った。
「私は貧しい家に生まれました。でも、そういう気持ちで生きていても、心は休まらないことも知っています。人は人の力がなければ生きられないのは確かですが、それを免罪符のように個人のものを奪い、何でもプールにしてしまうのは、きっと違う。他人にずっと何かを侵害されているような社会は人権のない社会で満足しろと言われているのと同じです。そんな発想で動かされてゆく社会に未来はありません」
『なるほどね。既にあきらめた奴はあきらめてない奴に、あきらめろあきらめろの大合唱をして足を引っ張るしかないからね。そいつがあきらめたら、みんなでそいつの才能山分け出来るし。って、僕ってすっごい親切ー。君たちにはこういうことなんて考えつかないんでしょ?あのねー、僕みたいにまだこういう気持ちを言ってくれる人間は、ましな方なんだよ。本当に自分の利益しか考えてない腹黒なんて、なに食わぬタヌキ顔で、人のために頑張ってますみたいな顔して、人のこと潰すもんね。ホント、怖いよねー』