不思議電波塔
それまで、静かに会話を聴いていたジャスティが、口を開いた。
「地球って何処?」
歳相応の少年らしい疑問に、涼が答えた。
「カウフェリン・フェネスはジャスティたちの住む世界。地球は私たちの住んでいる世界。地球は地の球と書く。地は大地のこと。球はまるくて美しいもののこと。カウフェリン・フェネスも地球と同じようにまるい」
「天球もあるの?」
何を思ったのか、意外なことをジャスティは聞いてきた。涼は頷く。
「ある。天球は地球のまわりの空を指していう言葉。どうかしたの?」
「地は蛇が這うところ。人は地に生きる生き物だから夢みたいなことばかり言うなと言う人もいる。でも天という空間がなければ、人は息は出来ないよね。窒息して死んでしまう。僕は人は天と地があってはじめて生きるものだと思う。地は目を覆いたくなるようなことも多いけど、天があるから、人はひととき、つらいことから解放される瞬間がある。地に起こることばかりを見ていろと言われても、争いが起こるだけなら、みんなで天を見る瞬間があってもいいんじゃない?綺麗なものを目にしたら、心が元気になるかもしれないし。心が幸せな時にいさかいを起こしたくなるような人はあまりいないと思う」
ジャスティは晴に訊いた。
「空を見上げて、幸せだと思ったことある?無いならだいぶ心が疲れているか、無感覚になっているか、病んでいると思う」
『空ね』
晴は小馬鹿にもしたような呟きを漏らしたが、ジャスティの聞くことが純粋過ぎて、愚弄する気が削がれたようだった。
『ないね。疲れていようが無感覚だろうが病んでいようが、面白ければそれでいいのよ。僕は。いい子ちゃん概念とかないからねぇ』
「いい子ちゃん概念って何?僕、そういう難しい概念とかってわからない。難しい理屈こねくり回して人を言いくるめようとする人の方がわるいと思う。人の嫌がっていることをわざとやる人も。それだけで人を不愉快にするから」