不思議電波塔



 祈は、ジャスティにも話しかけた。

『たこ焼きにブスは刺さらないよー。刺さるのはつまようじ。でも僕の感じた面白いことが何故か伝わったのが不思議。ふふ。でも刺さることもあるのかな?想像したらシュールだけど。たこ焼き、小さくてまるくて美味しいよ』

「ふーん…」

 ジャスティは空を見上げて笑顔になった。晴に言う。

「ね?空は楽しいことが降ってきたりするでしょ?」

 キノコに寝そべって会話の成り行きを楽しんでいたクマが、のほほんと言った。

「おいらのお菓子も降ってくるしねぇ。とりあえず、食べて行ったら?たくさんあるし」

 由貴は未だ不信感を持ったままクマを見ていたが、イレーネとフィノが落ちているお菓子を手に取った。

「お菓子は大丈夫そうだよ、由貴。あまりお互いに不信感持っちゃうのも良くないと思うけど。ああ言ってくれてるし」

「そうね。たこ焼きも食べてみたくなったわ」

 フィノが楽しそうに微笑んだ。

 晴が言った。

『たこ焼きの話、ちょっと面白かった。魔術師のカードは君らにあげる。ユニスだっけ?君が怒ってなければ、このカードはなかったと思っていい。僕もひととおり、今までの君を見てきた。大切なもののために怒ることも出来ない腰抜けに、このカードは渡さない。渡しても砂上の楼閣のような夢しかつくりきれないだろうからね』

 ふっと晴の声が途切れた。

 光の柱が立った。

 聖杯、剣、金貨、こん棒のガラクタが、消滅した。

 ユニスの立っている足元から、真っ直ぐに、道が伸びた。天に硝子の道が敷かれたような光景。

 あたりには何もなかった。全員が空の中に立っているようだ。

 キノコとクマだけは消えずに残った。クマが話す。

「思ったことを言葉にしたご褒美だねぇ。クリアになったね。次の門が開くよ」

 忍がクマに尋ねた。

「もう開けられるの?」

「イエス」

 クマはウィンクした。



     *



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