不思議電波塔
2。相対するふたつのもの。天と地。男と女。陰と陽。
黒と白の支柱を背に、女教皇は閉じていた目を開けた。
3。愛と生命と平和。調和のグランドトリン。女性の象徴。
実りの穂を手にした女帝が閉じていた目を開けた。
4。権利の主張。あらゆるものの凌駕。4大エレメンツ。
火地風水の力を手中におさめた皇帝が閉じていた目を開けた。
5。道徳心と知性。崇高な信仰心。安定感。
一定のエネルギーがまわりつづける五芒星のもとに法皇が閉じていた目を開けた。
硝子の道の先に、4名の姿が待っていたのを見て、先立って足を踏み入れた忍は呟いた。
「4部屋ある」
女教皇、女帝、皇帝、法皇は何も語らなかった。
来訪者をただ見つめているだけだ。
その様子は彫刻のようでもあり、生身の人間の気配というものが感じられなかった。
由貴は口を開いた。
「生きているのか…?」
涼が言った。
「これはタロットカード。大アルカナは22枚、小アルカナは56枚。さっきの聖杯、剣、金貨、こん棒は、小アルカナのスート。ハート、スペード、ダイヤ、クラブのこと。小アルカナにはトランプと違って、キング、クイーン、ナイト、の他にペイジ(小姓)がいる。だからトランプはジョーカーを除いて52枚」
由貴は涼に訊いた。
「俺もタロットカードかなと思って、0の次にユニスを立てたんだけど…」
「これは会長が仕掛けたものではないの?」
「うん。晴が仕掛けたんだと思う。既にあるものを門として仕掛けるのは、自分では考えなくてもいいし、話を作りやすいから。涼、大アルカナの22枚のカード、覚えてる?それが門になっていると思う」
「大アルカナは、法皇の次が、6恋人、7戦車、8力、9隠者、10運命の輪、11正義、12吊るされた男、13死神、14節制、15悪魔、16塔、17星、18月、19太陽、20審判、21世界」
涼が言い終えると、女教皇、女帝、皇帝、法皇の向こうに、タロットカードの大アルカナの部屋が現れた。
硝子の道に硝子の壁と門であるため、向こう側が透けて見えるのだ。
しかしどの部屋も今や使われない部屋のように、ひっそりとしていた。