不思議電波塔
由貴は緊張した面持ちで4つの門を見た。
「ごめん。『生きて帰れると思うのか』設定したのは俺」
「なにいいぃぃぃっ!?」
「この状況のために、意図的にじゃない。構想していたメモを晴が見たのかも。『生きて帰れると思うのか』は、フォーヌの皇帝のシュライゼが、ユリウスに言った言葉」
ユニスの表情が凍りつく。リュールは眉をひそめ、由貴を見た。
イレーネが訊いた。
「ユリウス王はどうしたの?」
「ユニスとリュールには手をかけるなと言った。己の命と引き換えに」
「……」
「今度は俺が問われている。カウフェリン・フェネスの大戦の犠牲となったリオピアの物語を書いたのは俺だから」
由貴はクマのところまで歩いてくると「危ないから」と言って、クマを庇うように立った。
クマは「おい」と声をかける。
「やめとけって。門なんか…その、何だ、みんなで考えて作りゃいいだろう。何だって晴なんかが仕掛けた罠にわざわざ飛び込む必要がある?いいように料理されるだけだろうが」
ユニスが由貴を止めた。
「やめてください、由貴。相手のしていることは、相手にとってだけ都合のいいおうむ返しのようなものでしょう?ユリウス王がそういう命運を辿ったからといって、晴という人物が私のような思いをしたわけですか?あなたがその問いの前に立つというなら、私が立ちます。私はユリウス王の子ですから」
由貴の表情は思い詰めているように頑なに変わらない。涼が「会長」と強い口調で言った。
「ユリウス王と同じ答え方をするなら、涼が会長を討つ」
涼の形相が恐い。
由貴は一瞬気持ちが揺らいだように視線を泳がせ、涼を真っ直ぐに見つめた。
「違う。俺の中で答えは出ていない。…だから、俺が立つべきなんだと思う。答えが出ている人間なら、問いに答える必要はない」