不思議電波塔



 立ちはだかったのは、恋人、塔、星、太陽、世界のカード。

 ユニスたちはそれをカウフェリン・フェネスにしか存在し得ない力で止めてきた。

 魔導、剣、龍、天馬、時を超える力。

 門は言った。

「お前たちの力を見せろ」

 書き手である由貴には魔法は無論使えた。だが、由貴はユニスと同じように魔法を振るうことはしなかった。

 自分たちはもともとそのような力を持たないからだ。持てるとしてもカウフェリン・フェネスだけでのことで、あちらの世界には人ひとりの創造した世界は想像でしかないと評される。それがどれだけの力を持つのか──。

「生きるということは何なのか、答えよ」

 全員に聞いているようだった。

 クマが何気なくぼやいた。

「そりゃ女の子だよ、女の子ー」

 クマの前に、本物のクマが現れた。

「女の子、って言ったわね?」

 ぬいぐるみのクマはぎょっとして固まった。

「ははははいぃぃっ?…その声は、もしや、うちのかみさん、かなぁ?」

 本物のクマが猛った。

「そのまぬけなクマの姿は何?私は本気で生きているのよ!いつまでもいつまでも、女の子女の子って、なら、私と結婚しなければ良かったじゃないの!そのキノコも何?胞子よろしく種なんかばら蒔いて、子供なんか作っているんじゃないでしょうね!」

「おお落ち着け!?こんなところで痴話喧嘩とか…ほら、高校生の子たちが見てるし」

「夫婦なんてこんなもんだって見せつけておけばいいのよ!さぁ、あなたは私に何をしてくれるの!答えなさいよ!」

 本物のクマの手が空を切った。

 悲鳴をあげて、ぬいぐるみのクマはそこいらを駆け出した。本物のクマが追いかける。

 由貴と四季は顔を見合わせる。

「何だか、相応の門が現れたって感じだね」

「うん。激しく現実的」

 忍が遠く、クマ同士の追いかけっこを見やり、言った。

「何かでも、あれはあれで楽しそう」

「えー?楽しいかな?」

「私は四季と音楽をしていたいわ」

 四季は忍を見て、微笑んだ。

「僕も。忍のそばでピアノを弾いていたい」



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