不思議電波塔
晴の言葉を理解するのに、数秒。由貴が確認するように訊いた。
「みんな、大丈夫?」
涼、四季、忍は頷く。四季が言った。
「僕、正直、ここまで走ってきているので結構きついから、ピアノの方がいい。ピアノなら弾ける。ワルトシュタイン、第2楽章はゆっくりになるから、音も取りやすいし、弾き直しもしやすいと思う。第2楽章までにピアノのある部屋探せたらいいんだけど」
「第2楽章、第3楽章、何分?」
「第2楽章が4分半弱、第3楽章が9分くらい」
「13分くらいか…。急ごう」
「クマさんたちは?」
涼が心配そうに言って、忍がクマの夫婦に声を放った。
「そこのクマさんも、帰りたいなら恋人の像を通ってきて。私たち、急ぐから!」
「んな、殺生なー!」
クマの声が響き渡るが、時間がない。
由貴と涼、四季と忍は手を取り合うと、恋人の像を通り抜けて行った。