天使の瞳
「あ、そうや。俺が行かんかったから結局、昨日の花火せんかったんやて」
「へー…」
「でな、一応、明後日するみたいなんやけど音羽も行かん?」
テーブルに並べてあるパンを適当に取ったタクはかぶりつきながら椅子に腰を下ろす。
「あたしはいいや」
「何で?」
「得に理由はないけど…。女の子達おるんやろ?」
「うーん…何人かはおると思う。ツレが呼んどるから」
「じゃあ、いいわ」
「え?何で?女おったらアカンの?」
「別にそー言う事じゃないねんけどな、ただいつも思うけどあたしの居場所ってないねんもん」
皆してギャーギャー騒いで、タクと晃くんに愛想を振りまわす女達。そういう雰囲気には慣れへん。
「千穂も呼んだらええんちゃうん?」
「うーん…」
「俺、聞いたるわ。せやったら別にいいやろ?」
「まぁ、いいけど…」
「じゃあ聞いとくわ」
その後、昼ごろまでいたあたしはタクに家まで送ってもらった。
ついでに忘れていた病院代も返した。タクはいらんって言ってたけど、お母さんがって事を強調して渡した。
リビングに入るとクーラーをガンガンに点けた歩夢がソファーで寝ている。
遊びボケか昼と夜が逆になってる。
こんな夏休みはいらない。普通なら最高って思う夏休みがあたしは嫌いだ。
家に居る時間が長いほど、何だか苦痛を味わってしまう。
次の日は日曜日で得に何もすることがなかったあたしは久し振りにお母さんの買い物に付き合った。
その次の日、タク達が花火しようと言ってきた日だった――…