年下の不良くん

Side  萩原・翔




────……

「ほらよ清水、持ってきたぞ」


中庭の隅の人気から死角になっているところで寝転がる翔の横に、萩原先生は弁当を突き付けて腰を下ろす


翔は何も答える事もなく、それを受けとるといつも中の弁当を取り出すのだが、今日は取り出す手が止まった


綺麗にラッピングされたチョコレートが、中に入っていた為に驚いたのだ


そうなるとわかっていた萩原先生は、横目でちらりと翔をみると、欠伸を一つついて口を開けた


「俺の彼女からだ
お前の話をしたら、何故かわからんが渡してと言われた」


そう萩原先生は言うが、嘘だと言うことぐらいはなから気づいていた


と、いうか、この弁当が渡された時から、嘘だとわかっていた


萩原先生の彼女が作ったと本人は豪語するが、明らかに挙動不審であった


そして、弁当を一口食べたとき、その懐かしい味から誰が作ったのかすぐに理解できた


だが、翔がその事を誰にも言わないのは、自分が口にすればこの愛しい人が作った弁当が、次から来なくなることくらい、安易に予想がついたからである



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