年下の不良くん


「あ、…すみません」


「いえ、大丈夫ですよ
それより、沢山のファイルですね」



「僕、どうも大雑把で、いっぺんに持てるだろと思って、沢山取ってきてしまって…
情けないです…」


「ふふっ、私も同じことをしたことがあります」


バイトをし始めた時に、彼のように沢山の足りなくなった備品を持ち運んだのだが、バサバサと床に落としてしまった経験がある


「りりか、急に消えてもらったら困るよ」


違う社員と仕事の話をしていた春樹は、急に居なくなった私を探していたらしく、小走りで私の元へやってきた


「…ごめんなさい」


「しゃ、社長…!!
あのっ、僕がファイルを落としてしまい、彼女に拾ってもらっただけでっ、悪いのは全て、この僕ですっ…!!
すみません…!!」


私の隣にいた彼は、勢いよく直角に頭を、目の前にいる社長に下げ


「そうだったのか
次からは落とさないように気を付けなさい」


社長の威厳というものを見せた春樹だが、口元はいつもみたいに微笑んでいる


その表情を見た彼の口元もまた、同じように緩む


「では、俺たちはこれで失礼するよ」


「はい、社長」


隣の彼は、通り過ぎる春樹に頭をもう一度下げて見送る


「りりかさん、本当にすみませんでした
このお礼は、いつか、必ず…」



「ふふっ、そんな事気にしないで下さい
お仕事、頑張って下さいね、“細川”さん」



ファイルを拾う時に、首から下げていた社員カードから彼の名前が見えていた


突然、名字を呼ばれた細川さんは、大きな目をもっと大きくさせて驚いたが、すぐに満面の笑みを見せると、私にも一礼をして去っていった



私も急いで、小さくなってしまった春樹の背中に走った


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