年下の不良くん
小さな蒼汰くんの手を繋いで向かったのは、この家の食事を任されているコックさんがいる、調理場だった
「あの、すいません
少しスペースを借りても良いですか??」
「おっ、お嬢様にお坊ちゃま…!!」
私と蒼汰くんが登場したことで、バタバタとしていた調理場が静かになり、料理長の声だけが辺りに響く
「こんな所に来てはなりません…!!」
「すいません、でも少しだけですから…」
「ですが、旦那様に叱られます…!!」
「大丈夫です
父からは好きなしろと許可を得てますので
それにもし何か父が言ったのなら、私が説明します…お願いできますか??」
「……畏まりました」
こんな会話をここに来て、何度目だろうか
なるべく前の生活スタイルを変えるつもりの無い私は、幾度となく自分で料理をここでしていた
そのことが父にバレた時は、何か言われるのではないかと心底ヒヤヒヤしたのだが、特に小言を言われる訳でも無かった
それからまた頻繁にここに来るようになり、料理長とは仲良くなったのだが、迷惑をかけてしまっているなとは実感していた
「すぐに作るから待っててね」
後ろの隅っこ方で用意された椅子に、ちょこんと大人しく座っている蒼汰くんに微笑み、私は用意してもらった物を使って作り始める
作っているのは短時間で出来上がる、子供も大人も大好きなホットケーキ
それを数枚焼いてお皿に乗せ、トッピングの材料だけ受け取ると、そそくさと調理場を離れた