鬼龍‐金色の覇者‐
「しっかし、此処に来たって事は逃げる事は止めたのか?」
『……さぁ…。』
私の曖昧な答えに、鼻で笑った柑子。
コーヒーを啜り、立ち上がりながら窓の外を見上げる。
「まあ、好きにすればいいさ。」
柑子はそう言うと、何処かへ電話をかけ始めた。
『(…止めれた、のか…。)』
私はと言うと、先ほど柑子に言われた事を考えていた。
逃げて逃げて逃げて。
前に進むために此処に来たけれど、やっぱり逃げている様な気がする。
「お前にはさ、思い出す時間が必要なんじゃねぇの。」
『……何を。』
「全部。楽しかった事も、苦しかった事も、嬉しかった事も、悲しかった事も。全部全部思い出しちまえよ。前に進むために此処に来たんだろう?」