地球の三角、宇宙の四角。
「記憶がないの、

私には、かなくんとの思い出がないの、

まったくないの」

思い詰めたような顔、言葉を選ぶように詰まりながら話し始めたのを最後まで聞くことにした。

「記憶じゃなくて、

わたしは邪魔でしかなくて、

記憶が曖昧になる病気とか、

そういうのではなくて、

元々ここにいた、ここにいるはずのね

あの……私というか」

苦しそうに唇から、一言、一言が零れていった。

か細い声は内容を理解するには聞き取りにくく、かといって聞き返す事も出来ないでいた。

彼女は僕から離れようとしている。

表情はそのことを雄弁に語り、僕はそこから全てを読み取っていこうとする。

言いたいことはだいたい解る。わかるけど、僕にしてあげられる事なんて、一体何があるというのだろうか。












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