ルージュ1/50
鼻から抜ける高い声に被せるように、唇を少し離して彼は言った。





「僕は君の口紅の50本の内、何本位を食べているのだろうね。」





私は答えずに、唇を彼に押し付けて舌を泳がせ言葉を遮る。




そうね、多分…。




蕩ける花と別なところで、考えている私がいる。




このままいけば1本分位にはなるかもしれないわね。




きつく瞑った目蓋の裏に、今まで口づけを交わした男達が浮かんでは消えていった。




全部のキスを集めたらどのくらいになるのかしら?




私にとっては、そちらの方が興味があった。
そんな私の思いを知るはずもない彼が、今ここで与えてくれる悦びを貪りながら私はもう一度啼いてみせた。

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