こわれもの
“あの時の俺は、馬鹿だったな……”
マキに別れを告げられて初めて、ヒロトは自分を責めた。
愛することの意味を履き違えて、現状維持で自己満足していたのだから。
だからといって、マキのことをないがしろにしていたわけではない。
心から、彼女を幸せにしたいと思った。
マキと別れてからも、良い大人の男になりたいと、努力を重ねた。
だからこそ、マキはこうして、自分の前に戻ってきてくれたのだと信じたい。
“もう、同じ失敗は繰り返さない……!”
心の大部分が、マキとやり直すことを選択していたが、その分、アスカと歩む道を捨てなくてはならない自分を、ひどく醜いと感じた。
“どうやって話したら、アスカは納得してくれる?
いや、そもそも、納得いく別れなんて、あるか?”
アスカにメールをもらってから、ヒロトの思考はそこで止まってしまった。
本当に、アスカと別れてしまっていいのだろうか?
自分がマキを選ぶことで、独りになったアスカの精神は狂ってしまうのではないか……?
“俺は、それだけの傷をアスカに与えようとしてる”