こわれもの

“あの時の俺は、馬鹿だったな……”

マキに別れを告げられて初めて、ヒロトは自分を責めた。

愛することの意味を履き違えて、現状維持で自己満足していたのだから。

だからといって、マキのことをないがしろにしていたわけではない。

心から、彼女を幸せにしたいと思った。

マキと別れてからも、良い大人の男になりたいと、努力を重ねた。

だからこそ、マキはこうして、自分の前に戻ってきてくれたのだと信じたい。


“もう、同じ失敗は繰り返さない……!”


心の大部分が、マキとやり直すことを選択していたが、その分、アスカと歩む道を捨てなくてはならない自分を、ひどく醜いと感じた。

“どうやって話したら、アスカは納得してくれる?

いや、そもそも、納得いく別れなんて、あるか?”

アスカにメールをもらってから、ヒロトの思考はそこで止まってしまった。

本当に、アスカと別れてしまっていいのだろうか?

自分がマキを選ぶことで、独りになったアスカの精神は狂ってしまうのではないか……?

“俺は、それだけの傷をアスカに与えようとしてる”

< 160 / 214 >

この作品をシェア

pagetop