こわれもの
吐く息は真っ白で、それは星にまみれた夜空にクッキリと浮かんだ。
ヒロトのアパートに向かうアスカの呼吸は乱れていた。
長い道のりを歩行して息が上がったからではなく、緊張と不安のせいである。
なぜだか分からないが、アスカの中には目を背けたくなるほどの不安感しかなかった。
まるで、ヒロトとの距離を遠ざけるように、雪が降り出してくる。
静かに静かに舞い落ちる白い粒は、アスカの心を少しずつ重たくしていった。
傘など持っていなかったので、アスカの頭は雪にあてられじょじょに冷たくなる。
ヒロトのアパートがある住宅街にさしかかると、どこかの家から夕食の匂いが漂ってきたが、それはアスカの胃を気持ち悪くさせるのに充分過ぎた。
心身ともに健康な時だったら、食欲をそそる匂いだったのに……。
しんしんと降り続ける雪は道路脇をうっすら白く染める。
ヒロトのアパートに着く頃には、景色一面、白銀の世界に変わっていた。
アパートの扉で立ち止まり、アスカは耳を済ませた。
ここまでやってきたのはいいが、ヒロトは部屋に居てくれるだろうか。
ヒロトからは、いまだにメールの返事が来ていない。