こわれもの
まだ、設立して二年目の予備校。
出入口をくぐるなり、新築独特のにおいがアスカの鼻孔をついた。
指定された教室に入り、窓際の席に座ると、曇り空に雪が降り始めていた。
12月の冷たい風。
この季節には、ヒロトと出会ったかけがえのない思い出がぎっしり詰まっている。
“ヒロちゃん……。
大好きだったよ”
窓の外に潤んだ瞳を向け、アスカは頬杖をついた。
“こんなとこで泣くな!
勉強しにきたんだからっ”
目に力を込めたが、早くも涙腺(るいせん)が緩む。
他の生徒に見られないよう、わざと窓側に顔を向けた。