こわれもの
これから先も、生きていたら、数え切れないほどの出会いや別れがあるだろう。
悲しいことや嬉しいことは、何の予告もなく起きる。
アスカはいま、それらのほんの一部を体験しているに過ぎない。
両親のことに関しての心の傷も癒し切れていないし、アスカの心にはたくさんのわだかまりや後悔が積もっている。
今、アスカの視界にちりばめられている雪景色のように、ヒロトと過ごした時間は彼女を優しく包んでいた。
今はまだ、ヒロトのことを忘れる自信が持てない。
ただ、これから先、アスカにはたくさんの出会いがある。
泣いた回数と同じだけ、笑顔の日々も巡ってくるはずだ。
自分の中に根付いた孤独を消すことしか頭になかった、以前のアスカ。
“ヒロちゃんからもらった愛情で、私は良い風に変わることができたんだよ。
夢を見つけることができたのも、ヒロちゃんのおかげなんだよ”
今は、ヒロトの幸せを願える自分を愛しく思う。
自分の成長が嬉しいと感じる。
将来は保育士になり、かつての自分と同じように親を恋しがり寂しさを抱える子供の傷を癒したい。
アスカは、そればかり考えている。