秘密の教室
「……ごめんなさい」
怒られる前に踵を返そうとしたあたしの腕を彼は掴んで言う。
「ねえ、今の気持ち良かったからもっとしてよ」
「え……えっと」
「ほら、早く」
勝手にその手を頭の上へと持って行かれ、為す術もなし。
まさか本人から触っていいだなんて。
「この辺ですか?」
破裂寸前の心臓をなんとか鎮め、彼の髪に触れる。
やっぱり気持ちいい。
一束貰って帰りたいくらいだ。
「もうちょっと上……なんて、やっぱどこでもいいや」
「すみません、こういうの慣れてなくて」
せっかく勇気を出して、更にあり得ない事にあたしへ向いたチャンスも、やっぱり女子力のないこんな地味なクラスメイトでは力不足。
恥ずかしいのと、申し訳ないのとで居たたまれなくなったあたしに彼は不敵な笑みを浮かべて言った。
「そういう慣れてないトコが好きだったんだって」
【end】
