純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 私を……否、誰かを愛することで、本来の心を取り戻しつつあるのだとしたら……それはとても、素晴らしいことなのかもしれない。

 マスターは2、3年前の桐生さんは死人のようだったと言っていたけれど、もしかしてその時に春香さんは亡くなった……?

 そうだとしたら、桐生さんは2、3年間ずっと心を閉ざしていた?……それを考えると、なんて悲しいことなんだろう。

 共感か、はたまた同情か……桐生さんの背中に手を回そうとして、私は途中で回すのを止めた。

 私は一体、何をやっているのだろう?何をしようとしているのだろう?私はこの人に誘拐されて監禁されているんだ。抱き締め返すだなんてそんなこと……出来ない。

 空中で止めた手は、カタカタと震え出す。ギュッと空気を握り締めた自分の両手を、私は静かに床の上へと置いた。


「……この左目は、」


 無言が続く中、ふと、桐生さんは口を開けた。

 左目?……ああ、包帯を巻いている、眼球がない方の目のことか。

 確か、“ただの怪我だ”って言っていたっけ。でも、ただの怪我で眼球そのものをなくすことってあるの?普通は、義眼をいれたりするものじゃないのかしら?

 なんにせよ、どうして今になって左目の話が……?
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