純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「でも、連絡先とかは知っているんっすよね? 電話とかメールとか……」

「しない。……そもそも俺は、携帯を持っていない」

「ええっ?!マジっすかぁ?!」


 本田洋佑の両目が、驚きで大きく見開かれた。

 俺は携帯を持っていない。春香が死んだと告げられ、マスターと出会ってすぐに手放した。

 携帯を触る気力がなかったこともあったが、もう俺には必要のないものだと判断したからだ。

 今まで何一つ不自由はしていないし、今も……篠原さんがすぐ傍にいるため、携帯を手にする必要はない。


「なんで持っていないんっすか?!持っていた方が便利っすよ?!」

「……君は、動物を閉じ込める檻を持っているか?」

「は? ……いや、持っていないっすけど。っていうか、俺には必要のないモノっす……」

「つまり、そういうことだ」

「え?」

「俺には携帯は必要ない。それだけだ」


 しばらくの沈黙の後、本田洋佑は静かに口を開けた。


「桐生さんは……動物を閉じ込める檻、持っているんっすか?」


 俺のことを真っ直ぐに見つめながらそう問うてきた本田洋佑の瞳は、夕日のこともあってか、不気味に輝いて見えた。
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