純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 次の瞬間、桐生さんは、お父さんに深々と頭を下げていた。私もお父さんも、桐生さんの突然の行動に驚く。

 ……だけれど、よくよく考えてみれば、それは当然の行動なのだと思う。

 犯罪を犯した者が被害者の親族に直接会い、謝罪をする行為……それはとても勇気のある行為でもあり、とても危険な行為でもあるだろう。

 被害者が犯罪を犯した者に対して怒りをあらわにし、暴行をくわえた……という例を、どこかで聞いたことがあるからだ。


「謝罪をして済む問題だとは思っておりません。赦してもらえない行為を犯してしまったことだということは、重々承知しております。大切な娘さんを誘拐し、ましてや監禁までもを行い、怖い思いをさせてしまい、まことに申し訳ございませんでした!」


 桐生さん……。私は桐生さんの心からの謝罪を見て、再び泣きそうになっていた。桐生さんの謝罪がいかに真剣そのものであるのか……それがハッキリと伝わってくる。

 お父さんは何も言わず、頭をさげたままにしている桐生さんのことを、ただただ見下ろしていた。

 緊迫とした、それでいて殺伐とした空気だけがそこに流れていた。
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