純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 死神って、アレか?人の魂を鎌で切り取っていくとかいう……骸骨のような容姿に、黒いフードを被っているような空想上の生物。

 そんなもの、世間的にはいないと認識されており、俺だって存在を信じていない……というより、興味自体がないのだが。

 そのこの世に本当にいるのかいないのか分からない生物になりたいか?……だと?彼は何をわけの分からないことを言っている?ふざけているのか?

 ……そうか。ふざけているのか。どうして俺の家のベランダにいるのかは分からないが、所詮……子供の言うことだ。ちょっとばかし、子供のお遊びに付き合ってやるか。


「さぁな……別に、どうもしない。まぁ、少なくとも――俺は人外になる気はない」


 死神になるということは、人じゃない生物になるということだろう?

 里桜と離れるつもりは毛頭ないし、俺は里桜の横で胸を張れるような“普通の男”になりたい。

 人を誘拐して監禁するという前科がある以上、そんな事実を無かったことにするくらいの……胸を張って言えるくらいの、“普通の男”でいたい。

 人外になる気は、ない。

 目の前の少年は一瞬だけ驚いたように目を開かせたが、まるで、すぐに面白いオモチャを見付けたかのようにニヤリと笑みを浮かべた。
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