俺様教師の甘い罠
「 ・・・それ、やめろ 」
不機嫌、というかいつもより
低い先生の声に顔を上げれば
書庫のドアにもたれかかって
ネクタイを緩めている先生と
目が合った。
「 ・・・暑いです、先生 」
「 言うともっと暑くなるんだけど 」
「 書庫もですか? 」
数冊の本を片手にネクタイを
胸ポケットに突っ込んだ先生が
当たり前だろ、と私の頭を撫でて
私の横を通り過ぎた。
「 行くぞ・・・っていうか
夏休みなんだし遊びに行けば? 」
「 遊びに行ってもいいんですか? 」
足で図書室のドアを開けながら
小さな笑い声が室内に響いて
振り返った先生は口角を吊り上げて
「 生意気 」
伏せた目に捕まって固まった私を
再度笑って、早く来いって
言いながら先生は出て行ってしまった。