【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐


「…マコちゃん」

「うわっ、急に“ちゃん付け”とか何ー? 気持ち悪いよ?」


「…いや、あのさ。
今って一人暮らししてるの?」

「そうだよー。
職場がこっちだから、こっちに住んだ方が楽かなぁと思って」


…一人暮らししてる部屋に、躊躇いもなく男(オレ)を上げるのか。




「…あのさ、俺、一応男なんだけど。
そういうの気にしないで、平気で部屋に上げちゃうんだ?」

「だって、なんの準備もしないで迎えに来たんだから仕方ないでしょー?」

「…まぁ、そうだけど…」

「ならオッケーじゃん」


…オッケー、なのか?




「あ、そういえば男の子を部屋に上げるなんて初めてだなぁ」


…え? 初めて?


「えっと…、彼氏は来たことないんだ?」

「無かったねー、いつも私がアイツの部屋に行ってたから。
あ、しまった! アイツの部屋に私の荷物置きっぱなしだ! くっそぉ、私の新品化粧水を返せ! 高かったんだぞー!」

「……ふぅん」


「ちょっとちょっと!
聞いてきたくせにまーた興味無い返事?
つまんない男だなー。 もっとこう、一緒に怒ったり悲しんだりしてくれたらいいのにー」


…興味無いってわけでも、ないけどね。




「あ、ここが私の住んでる部屋だよー」


…と、いつの間にかマコの住むアパートまで来ていたらしい。

外観を見る限り、かなり古い感じがする。




「家賃激安! でもこの前、覗かれちゃいました!」

「…マジで?」


「そうだよー! 結構広いのに家賃がなんと3万5千円!」

「いや、そっちじゃなくて」


…うん、確かに安いけどさ。
あり得ないくらい安くて、人に言いたくなるのはわかるけど。

でも、どう考えたって「そっち」じゃないだろ。




「…覗かれたって、ほんと?」

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