桜の咲く頃に
「チェリー、またバックミラー覗いたら、いつの間にか消えてて、座席が濡れてるな~んことやめてよね。ところで、その後どうなのさ?」
 車を発進せるなり、聞いてきた。
「ちょっとさびしいけど、まあどうにかやってる」
「あの桜餅食べさせといて、そんなことよく言えたものよね」
 そう言いながら、バックミラーに映るチェリーフラワーを睨む。
「最後の瞬間は看取らせてもらったけど……だって、結局、こっちの世界の者とあっちの世界のものが結ばれるはずもないじゃん」
 チェリーフラワーはそっと呟くように言うと、窓ガラスに映る、真っ白な自分の顔にちらりと目をやった。 
 深紅の車体は瞬く間に闇に溶けていった。

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