親指の虜 ―The Thumb Addict―

「もう3ヶ月経つんだね、この仕事始めてから」

「はい、まあ……」


受け答えもそこそこに、視線はまっすぐ親指へ。

はあ、何だって先生のMP関節(第二関節)はこんな
に固く出っぱってて男らしいのに、ある種の色気
すら感じるんだろうか。

加えてIP関節(第一関節)の曲がりっぷりときたら
堪ったもんじゃないし、それら二つの関節が合わ
さって親指全体に綺麗なL字型を描く様は、
最早芸術と言わざるを得ない。

けれどもやはりダントツは、あの指から繰り出さ
れる妙技の数々だろう。程良い力加減で手を擦
られ腰を揉まれた暁には、文字通り骨抜きになる
こと請け合いだ。それだけ彼の指はキモチイイ。

もしあの魅惑的なL字に治療以外のことをされた
としたら、私は一体どうなってしまうんだろう?
想像するだけで背筋がブルリと震えてしまう。


「これでも10年ちょっとはやってるからね、
3ヶ月の子には負けないよ?」


何故かそう言っておどけてみせる彼に思わず目が
点になる。は?え?ソレハドウイウコトデスカ?

訳も分からぬまま先生を見上げれば、そこには
強烈な色気をまとった微笑みが。もしかして、
今迄の欲望を全て聞かれていたんだろうか?
だとしたら物凄く恥ずかしいっ!!

今度は羞恥のあまりうつむいた私の頭上で、
再び彼が笑った気がした。




――ああ、今日も私は貴方の親指に夢中です――




  【親指の虜 The END】
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