ONLOOKER Ⅳ


簡単なこと、とマサトは言ったが、ナオには、そうは思えなかったようだ。
ふらりと後ろに倒れ込みそうになって、隣にいたユカリに支えられる。
が、彼女も同じように今にも倒れそうなほど真っ青で、見兼ねたシュンが、二人に手を貸した。

「ナツ先輩が中庭へ出たのが、6時40分頃」

直前のあの一言が、まるで全ての形勢と立場を変えたようだった。
すっかり“探偵役”になってしまったマサトが、無表情のまま、淡々と言う。

「ヨリコ先輩、7時20分にトイレに立った時、戻ってきて『もう自分たち以外は誰もいない』って言ったんでしたね」
「え……? う、ん、そうだった、かな」
「別にその時間に、最後の生徒が帰るのを見たと言ったわけじゃないんですよ。なのに俺たちは、ずっとそれを基準に考えてしまっていた」

単純なミスリードですね、とマサトが言う。
確かに彼の言うように、本当はもっと前に、北校舎には映研部員以外誰もいなくなっていたのかもしれなかった。



< 99 / 138 >

この作品をシェア

pagetop