うさぎ と くま の物語 (完)
 

佐崎センパイの腕が私からスルッと離れる。


「さー梨乃にも渇入れられたし、始めるかー」


背伸びをしながら、そんなことを言う佐崎センパイに向かって、私は心の中でこっそり突っ込みを入れる。


………何ですか、その理由。


「よーし、集まれー」


部長である佐崎センパイの声が柔道場に響く。


ピリッとした空気になる。


軽い言葉を吐いちゃう佐崎センパイだけど、柔道は本当に好きみたいで。


部活が始まると、すごく真剣な顔になる。


細身に見えるけど、そんなことはなくて。


篠田センパイと張り合うくらい強いんだ。


―――そして、篠田センパイは…


穏やかな表情で、佐崎センパイの横に立っている。


穏やかな中にも、目の奥には厳しさが見える。


………カッコいいなぁ。


よしっ。


もちろん、私も。


部活が始まれば、みんなのマネージャーだ!

 
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