チョコレート
何を話したらいいか分からず、私はゆっくり自転車を引きながら歩いた。

沈黙を破ったのは、宮本先生だった。

「若山先生はいつも自転車?」

「はい、宮本先生は?」

「車だよ。近くの駐車場に止めてある。」

「そうなんですか…」

胸が苦しいのと、赤くなっているであろう顔を見られたくないので、私は俯きながらそう答えるのが精一杯だった。

「緊張してる?」

また心を見透かされたような気がして、私は答えられなかった。

「何か分からないこととかあったら僕に聞いてよ。講師歴は意外と長いんだ。」
「はい。」
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