HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 俺の気持ちとは裏腹に今日は朝から快晴だ。

 隣の席には高橋さん。いや、もうこの際だ。舞ちゃんでいいよね?

 舞ちゃんは相変わらず朝からそっけない。挨拶も仕方なくしてやったという感じで、俺は初っ端からかなり落ち込んだ。

 一時間目は世界史の自習だった。

 プリントが配られると俺はすぐさまやっつける。やり終えると弟の寛人の顔が浮かんできて無性に腹が立った。

 もともと俺は他人への興味が薄い。誰が誰と付き合おうが別れようがどうでもよかった。

 だが、寛人だけは別だ。

 弟と俺は年子だ。だけど兄弟なのに似ているところは少しもなく、何もかもが正反対だった。

 寛人は幼い頃から非凡な学力で注目され、今はS市の進学校に通っている。ムカつくことにそこでも常に最上位に君臨しているらしい。

 でも残念なことに弟は容姿が凡庸だった。身長はついに妹にも追い越され、体重も注意しなければBMI指数が「肥満」の域になってしまう。当然運動が苦手だ。

 これらのことは言うまでもないが俺の優位で、兄としてのプライドを鼻にかけていられる部分でもある。容姿については遺伝子の気まぐれだろうからお気の毒としか言いようがないけどね。

 そんなわけで俺たちは小さな頃からことごとく比較されてきた。両親は直接言葉にはしないものの、暗に俺と寛人を競わせてきたのだ。

 ぶっちゃけ俺は、勉強に関してはもう諦めていた。

 でも色恋沙汰まで弟に負けるのは兄としてどうにも許せない。
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