Steady
敦と視線を交わしたまま

優が私の目の前に

ぴたりと止まる。


視線を合わせたまま

無言の2人がかもし出す空気に、

私は思わず1歩後ずさる。


これほど重く長い沈黙は

これまで体験したことがない。


その沈黙を破ったのは、

意外にも優だった。


「キミが、敦くんだね」


いつものように

ふんわりとした声で訊ねる。


敦に向かって微笑んでみせたけれど、

それは感情のない冷たい笑みだった。


そんな微笑みを

見たことがない私の心は

一瞬にして凍りつく。


敦は動揺もせず、

優の問いかけに黙って

大きく頷く。


いつもは口が軽くて

ノリがいい敦が、

一向に口を開こうとしない。


キュッと唇を噛み締めるように

きつく閉じたまま

優を見続けている。


敦の様子をじっと見ていた

優が一つ息を吐く。


「敦くんのその表情だと……。

 どうやら分かってるみたいだね」





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