御曹司なんてお断りっ◆
***
「武。今からいくからーー」
俺は、ふぅっと息を整えてから
武に聞く。
『武?いつもの料亭でいいんだよな?』
「…えっ?あ。はい。
今現在、大原本部長と宮守部長が、
プロジェクトの概要を再度説明中です。』
ふぅーん。
ってことは、まだ先方さんは納得してないってわけか。
『…昴様。来なくても大丈夫です。どうぞ、ごゆっくりーーー』
「うるさい。武!」
武の気を使うような戸惑う声に、
俺はいら立ちを覚え、強めに電話口で怒鳴った。
『・・・・はぁ?てめぇが帰りたいってゆーから、
こっちは気を使ってんだ。
いいから、食事でもホテルでもさっさとヤッてこいよ』
あ。武が切れた。
でも、志保に食事をフラれて、
キレそうなのはこっちも一緒だ。
「うるさい。市川。」
今度は冷静に、
ゆっくりつぶやく。
武が言葉に詰まる。
俺が「市川」と呼ぶときは仕事に真剣な時だけだからな。
「気にするな。
珍しく、お前が20%と打ち出した商談。
俺が、見事に100%にするから。
あと、5分。時間を稼げ。」
ようやく止まったタクシーにさっと
飛び乗った。