御曹司なんてお断りっ◆

***

「武。今からいくからーー」


俺は、ふぅっと息を整えてから
武に聞く。



『武?いつもの料亭でいいんだよな?』

「…えっ?あ。はい。
 今現在、大原本部長と宮守部長が、
 プロジェクトの概要を再度説明中です。』

ふぅーん。
ってことは、まだ先方さんは納得してないってわけか。


『…昴様。来なくても大丈夫です。どうぞ、ごゆっくりーーー』

「うるさい。武!」

武の気を使うような戸惑う声に、
俺はいら立ちを覚え、強めに電話口で怒鳴った。







『・・・・はぁ?てめぇが帰りたいってゆーから、
 こっちは気を使ってんだ。
 いいから、食事でもホテルでもさっさとヤッてこいよ』

あ。武が切れた。




でも、志保に食事をフラれて、
キレそうなのはこっちも一緒だ。

「うるさい。市川。」

今度は冷静に、
ゆっくりつぶやく。

武が言葉に詰まる。
俺が「市川」と呼ぶときは仕事に真剣な時だけだからな。



「気にするな。
 珍しく、お前が20%と打ち出した商談。
 
 俺が、見事に100%にするから。

 あと、5分。時間を稼げ。」

ようやく止まったタクシーにさっと
飛び乗った。


< 177 / 305 >

この作品をシェア

pagetop