御曹司なんてお断りっ◆
***

こういう時の山積みの仕事ってありがたい。

「--でも、このミスはないわよね・・」

志保は目の前の見積もりに目を通す。
部品の見積もりの桁が違う。
これじゃぁ、赤字もいいとこだわ。
上司から回ってきた訂正の仕事、これがなかなか厄介だった。


昨日からの仕事もまだ終わってないしーー

よかった。今日はお昼も入れないかも。


どうしても、
今日はいつもの喫茶店に行くのは気が引けた。


意識しているは私だけだったりしてーーー

そう考えるとおかしかった。



「田中さん。お昼に行かないの?」

「・・・・・く・・黒田課長!」

ちょうどお昼時間のため、志保の部署は奥に一人残っているぐらいで
出払っていた。


「・・そんな警戒しないで?
 ただ、休憩しようかなと思ったら、田中さんが見えたからさ。」

にこにこと優しそうに笑う黒田課長。


夕べ、好意はうれしいですがお答えできませんと言って
食事を断ったばかりなので
気まずさと、申し訳なさで志保は
少し困ったように微笑み返した。


「今日は、お昼は出ません。
 仕事が詰まっててーー」

「え?お昼抜くの? んーーじゃぁ、まってて?」

黒田課長は、そういうと、アッというまにその場を後にする。


ーーな・・なんだったのかしら?

< 232 / 305 >

この作品をシェア

pagetop