御曹司なんてお断りっ◆

「あなた。」

今までじっと黙っていた奥様の方が言葉を割り込む。
品のいい黒色のドレスがよく似合う夫人だった。


「…なんだ?」

「始も樹も、あなたの言う通りに、
 どこかの『プラスになる』令嬢と結婚したのは、
 
 昴のようにこうやって『大切な人』がいなかったからでしょ?

 いまどき『家のため』とか…
 どれだけ頑固な古臭い頭なの。」

「--何を言ってる。私は家の為に・・・」

「息子の恋路を邪魔することが
 家の為になるの?
 政略結婚でしか発展できないようなら
 つぶしておしまいなさい?」

あっさり言い捨てる奥様に、
昴さんも、お義父さんも、びっくりしたように黙った。



はぁ。と綺麗にため息をつきながら、
志保に向かってふんわりと笑った。


ーーあ。昴さんってお母さん似なんだ・・・

「ごめんなさいね。主人が失礼な態度を。志保さん。
 とりあえず今日は楽しんで行って。

 あとから、始も樹もくるわ。」

クルリと背を向けて、
旦那さんの腕を引っ張る。


「昴。しっかりね?
 


 あと、志保さん。
 お母様によろしく」

意味ありげに ふふふ と笑って奥様は会場の奥へと去って行った。


ーーえ?

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