鈴姫
「ちょっと!信じられない!あんた本気で割ろうとしたね!」
鏡があった場所にはハルが立っていて、器はハルを掠めて割れた窓から外へ消えた。
「粉々にしたほうが、運ぶのには便利だろう」
「あんたって一応、私の守りを司ってるんじゃなかった?」
「リン、出番だ。鏡を鎮めるのはお前の役目」
「あんたとは一生仲良くなれない!」
「仲良くするつもりは毛頭ない」
ふんっ、と二人とも互いに背を向けてしまって、香蘭は唖然とした。
仲良く見えるのは香蘭の気のせいだろうか。
おかしくて、ついくすりと笑った。
「鈴、もう行くぞ。準備はできたか」
いつの間にか嫌がるハルの手をしっかり握って部屋を出ようとする秋蛍を、慌てて引き留めた。
「秋蛍様、ちょっと待ってください」
「なんだ」
秋蛍が不機嫌そうに振り向いたので、香蘭は尻込みしてしまった。
言いにくそうに指を弄ぶのを見て、秋蛍が早くしろと促した。
「あの……、憂焔にお別れを。何も言わないで行くのは、……その」
「……時間がない。駄目だ」