鈴姫
翌日から、皆で森に入り香蘭は鏡の流れを自分のものにするための訓練を始めた。
秋蛍は香蘭が選んだ鏡の布を解いてから香蘭に渡し、念を押した。
「鏡を見るんだぞ、鏡を。…ハル、間違ってもこの前のようなことはするな」
「しないよ。応援するって決めたから」
口を尖らせながら言うハルに、香蘭は首を傾げた。
「ハルって全ての鏡に通じてるの?」
「当たり前じゃない。あたしは鏡の中で一番偉いの」
「なるほどね」
得意げに胸を張ったハルから憂焔に視線を移した。
憂焔は近くの木の下に腰を下ろして剣の手入れをしている。
香蘭はそれを確認してから、鏡を覗きこんだ。
直接鏡を見るのは久しぶりで、少し緊張する。
すぐに、いつもの感覚が香蘭を襲った。
「う…」
負けないように、必死で鏡と対峙する。
鏡を持つ手に力が入る。
「…“鏡”を見ろ」
「わ、わかってます」
秋蛍に答えながらも、額に汗がじわりと浮かんできた。
鏡を見るのよ、鏡を見ていないから気分が悪くなるの、と言い聞かせながら、睨みつけるようにじっと鏡を見る。
駄目…
集中できない。